住宅ローンの支払いが苦しくなると、不足を補うためにカードローンやキャッシングを利用してしまう方が少なくありません。

しかしそのようなことをすると、どうなるでしょうか!?カードローンなどの借金返済が必要になり、かえって首を絞めてしまいます。

住宅ローン返済で困ったときには「住宅ローン特則つきの個人再生」で解決できる可能性があります。

今回は「個人再生」や「住宅ローン特則」とは何なのか、住宅ローンを払えない場合の対処方法とともに説明していきます。

1.個人再生とは

個人再生とは、裁判所に申立をして大幅に借金を減額してもらう債務整理の手続きです。

カードローンや消費者金融、キャッシング、クレジットカードなどの借金を大きく減らし、3年程度で返済すれば残りの借金を免除してもらえます。

個人再生では基本的に「すべての借金」が減額対象になりますが、住宅ローンを減額の対象にすると金融機関が「抵当権(担保)」を実行して物件を競売にかけてしまいます。そのような事態になると債務者の家が失われて不利益が大きくなるので、個人再生には「住宅ローン特則」といって「住宅ローンつきの家を守れる方法」が用意されています。

2.住宅ローン特則とは

住宅ローン特則とは、個人再生の際に住宅ローン以外の他の負債のみを減額対象とし、住宅ローンについては支払いを継続することによって家を守れる特則です。

住宅ローン特則を利用すると、住宅ローンは減額されません。ただし他の借金を大きく減らしてもらえるので、住宅ローン以外にカードローンなどで借金してしまった方は毎月の支払い額を大きく減らし再生できる可能性があります。

また住宅ローンを長期にわたって滞納すると保証会社が「代位弁済」して一括請求してきます。そんなとき住宅ローン特則を利用すると「代位弁済」をなかったことにしてもらえて元のように銀行にローンを分割払いできるようになり、家を守れます。

住宅ローン特則は私たちの「生活の基盤となる重要な家を守るため」に法律が認めている特別の制度なのです。

3.住宅ローン特則つき個人再生を利用するメリット

住宅ローン特則つきの個人再生を利用すると、以下のようなメリットがあります。

3-1.借金や未払い金を大きく減額できる

個人再生を利用すると、借金だけではなくさまざまな未払い金も含めて大きく減額してもらえます。以下のような負債が減額の対象になります。

  • 消費者金融のキャッシング
  • クレジットカードのショッピングやキャッシングの未払い金
  • カードローン
  • 未払いの家賃
  • 未払いの通信費
  • 奨学金
  • 事業資金の借り入れ

債務の減額幅はケースにもよりますが、5分の1~10分の1程度です。たとえば700万円の負債がある方の場合、140万円にまで減額されます。これを3年で支払っていくので、月々の支払い額は39,000円程度に抑えられます。住宅ローン特則を利用する場合、この39,000円と住宅ローンの金額を支払っていけば、3年で借金を完済して後は支払いを住宅ローンだけになります。

3-2.代位弁済をなかったことにできる

住宅ローン特則を利用すると、保証会社による代位弁済をなかったことにできます。保証会社から一括払いを求められていても、時間が巻き戻って金融機関へ分割払いできる状態に戻ります。競売を申し立てられる心配もなくなり、団体信用生命保険も復活します。

3-3.競売が開始されていても中止できる

代位弁済が起こってしばらく放置していると、保証会社は裁判所に競売を申し立てます。競売手続きが進むと、やがて家は他人のものになってしまいます。

住宅ローン特則つきの個人再生を申し立てると、裁判所から「競売中止命令」を出してもらえます。競売を止めている間に個人再生の手続きを進めれば、最終的に競売を途中終了させて家を守れます。

3-4.強制執行されるおそれがなくなる

住宅ローンを支払わずに放置していると、金融機関から競売を申し立てられたり裁判を起こされて給料を差し押さえられたりするリスクが高まります。

個人再生を申し立てて「個人再生手続き開始決定」が下りると、その後債権者は競売申し立てや給与差し押さえができなくなります。

債権者から「競売を申し立てます」「強制執行(差押えを行います)」などと予告されている方は、早めに個人再生を申し立てることによってリスクを避けられます。

3-4.給与差し押さえを停止できる

すでに給与の差押えを受けている方も個人再生をするメリットが大きくなります。個人再生を申し立てると給与差し押さえを停止できるからです。差押えが止まると毎月の差押え分が会社にプールされて、個人再生が終了したときにまとめて返してもらえます。

3-5.財産はなくならない

債務整理というと自己破産が有名です。自己破産をすると財産がなくなることが知られているので「個人再生の場合にも財産が失われるのでは?」と心配する方がおられます。

しかし個人再生をしても財産はなくなりません。預貯金、保険、自動車などの資産を守ることができるのも、大きなメリットとなるでしょう。

4.住宅ローン特則つき個人再生の注意点

すべての方に住宅ローン特則つきの個人再生が適しているわけではありません。

以下のような注意点があります。

4-1.収入が一定以上ないと利用できない

個人再生をすると、手続き後3年間債権者への借金返済を継続しなければなりません。住宅ローン特則を利用すると住宅ローンの支払いも必要となります。

このような支払いが確実にできる「一定以上の収入のある方」でないと個人再生の利用が認められません。

収入額については「〇〇円以上」という制限額はなく、状況に応じて個別に計算されます。たとえば住宅ローンと減額された借金の合計で「毎月10万円」の支払いが発生するなら、毎月の収入から支出を引いた残りが10万円以上必要です。

公務員、会社員だけではなく自営業者、フリーランス、アルバイトやパート、年金生活者でも適用できる可能性がありますが、収入が必要な額を下回っていると利用できません。

無職の方、専業主婦の方などは個人再生できません。

4-2.住宅ローン以外に借金がない場合にはあまり意味がない

住宅ローン特則を使うと、住宅ローン以外の借金は減額されますが住宅ローンそのものの支払い額は基本的に減りません。リスケジュールしても、基本的に元本と利息全額の支払いが必要となります。

「住宅ローン以外に借金はない。そもそも住宅ローンが高すぎて支払えない」方は住宅ローン特則を使っても解決できない可能性があります。

4-3.代位弁済後6か月以内しかできない

代位弁済が起こっても、住宅ローン特則つきの個人再生を申し立てれば代位弁済をなかったことにして家を守れます。

ただし住宅ローン特則つきの個人再生は「代位弁済後6か月以内」しかできません。6か月を超えると家を諦めざるを得なくなるので、早めに申立をしましょう。

5.住宅ローン特則つき個人再生をオススメするケース

以下のような状況であれば、住宅ローン特則つきの個人再生をぜひ検討してみて下さい。

5-1.住宅ローン以外に借金がある

住宅ローンの支払いが家計を圧迫したなどの理由でカードローンやクレジットカードなど借金してしまった方は、住宅ローン特則を適用すれば支払い額が大きく減って家を守れる可能性があります。奨学金も減額されるので、支払いが苦しい方にオススメです。

5-2.代位弁済が起こってしまった

保証会社が代位弁済をしたら、早急に住宅ローン特則つき個人再生をしましょう。代位弁済をなかったことにして家を守れるからです。6か月が経過すると住宅ローン特則つきの個人再生はできなくなるので、急ぐ必要があります。

5-3.競売が始まっている

競売が開始されている場合、住宅ローン特則つきの個人再生を申し立てれば競売を中止して家を守れる可能性があります。ただし競売も進みすぎると対応が難しくなる可能性があるので、早めに申し立てましょう。

6.住宅ローン特則を使っても解決できないケース

以下のようなケースでは、住宅ローン特則つきの個人再生をしても問題を解決できないケースが多数です。繰り返しになりますが、重要なので、もう一度、お伝えします!

  • 住宅ローン以外に借金がない

住宅ローン以外に借金がなく「そもそも住宅ローンを払えない」方は、住宅ローン特則を適用しても減額されないのであまり意味がありません。

  • 代位弁済から6か月以上経過してしまった

代位弁済から6か月が経過すると、住宅ローン特則は利用できません。

  • 競売が終わってしまった

すでに競売が終了している場合、家を取り戻すことはできません。

  • 収入が低すぎる、無収入

収入が低すぎる方や無収入の方は個人再生を利用できません。

  • リストラ、病気、けが、失業などで仕事がない

リストラや病気、けがなどの理由で失業している方も収入がないので個人再生を利用できません。

7.任意売却で解決する方法

個人再生で家を守れなくても「任意売却」によって状況を改善できる可能性があります。

任意売却とは、金融機関の許可を得てオーバーローン物件を不動産市場で売却する方法です。住宅ローン付きの物件は、金融機関の許可なしに勝手に売却できません。ただオーバーローン状態でも「どうしても払えないから物件を売却して残ローンを払わせて下さい」とお願いし、金融機関が承諾すれば市場で売却できるのです。それが任意売却です。

任意売却も「売却」の1種なので、手元から家が失われます。ただ放置して競売に任せるよりさまざまなメリットがあります。

7-1.家に住み続けられる可能性

住宅ローンを支払えなくなっても、できれば家に住み続けたい希望を持つ方が多いでしょう。

任意売却をすると、売却後も家族とともに居住を継続できる可能性があります。「リースバック」という方法です。家を不動産会社に購入してもらって賃貸を受けたり「買い戻し特約」をつけて分割で代金を払ったりして家に住み続けます。親族に買い取ってもらって賃貸を受ける方法もあります。

毎月の賃料や買い戻しの代金支払いが発生しますが、今までと変わらない生活ができるのは大きなメリットとなるでしょう。

7-2.自己破産を避けやすい

住宅ローンを滞納して放置すると「競売」にかかって家が強制的に売却されます。競売では家が安値でしか売れないので、ローンを完済するのは困難です。高額な残ローンが残り、金融機関から一括請求される可能性が高くなります。そうなったら「自己破産」しか道がありません。

任意売却であれば不動産市場で普通に買主を探して売却できるので、競売より高額で売れる可能性が高くなります。また任意売却後は分割払いが認められるのが通常です。

残ローンを大きく減らせて分割払いができれば、自己破産を避けやすくなるでしょう。

7-3.無収入でも利用できる

住宅ローン特則つきの個人再生は無収入だと利用できませんが、任意売却には収入は関係ありません。無収入の方や収入の少ない方でもできます。

また任意売却をしても、家以外の他の財産はなくなりません。預金や保険、自動車などが失われる心配はないので、安心しましょう。

8.任意売却の期限

個人再生の住宅ローン特則に「代位弁済後6か月」の期限があるのと同じように、任意売却にも期限があります。それは「競売手続きの開札日の前日まで」です。

競売手続きの終盤で「開札」が行われます。開札が済むと新たな所有者が法的に決まってしまうので、それまでに任意売却を終えなければなりません。

家が競売にかかってしまったら、放置せずに早めに任意売却を進めましょう。

9.住宅ローンが払えなくなったらご相談を!

住宅ローンを支払えなくなったとき、放置していると競売にかかって大切な家が失われてしまいます。早めに対応すれば個人再生や任意売却で不利益を小さくできる可能性があります。

もしも住宅ローンを払えなくて困っているなら、一人で悩まずに、すぐに専門家に相談するようにしましょう。