今回は、マンションの修繕積立金がなぜ上がるのか!?について取り上げます。
修繕積立金で、特に大きな割合を占めるのが、10年〜15年に1度行われる大規模修繕工事の費用です。修繕積立金の金額は、この大規模修繕工事を中心に作られる長期修繕計画によって決まります。
修繕積立金の値上げの主な要因は、その積立方式です。また、積立方式以外にも、値上げの要因が、いくつかあります。
目次
積立方式による値上げの違いとは?
マンション修繕費の積立方式は、大別すると(1)「段階増額積立方式」と(2)「均等積立方式」と(3)「一時金徴収方式」の3種類があります。
(1)段階増額積立方式
3種類の積立方式の中では、最も一般的な方式です。段階増額積立方式は、マンションの建物劣化状況に応じて、5年、10年など一定期間ごとに修繕費の金額を見直します。
この方式のマンションを新築で購入した場合、初期の修繕積立金は安価で、建物の老朽化による修繕費の増加にともない、段階的に値上がりします。そこで、新築時の修繕積立金があまりにも低い場合は、後に大幅な値上げが必要となるため、注意が必要です。
最近のマンションは(1)の徐々に挙げていくマンションが多く見られます。理由はなぜか!?簡単ですね。新築を販売するディベロッパーが売りやすいからです。
(2)均等積立方式
均等積立方式は、マンション新築時から30年間に必要な修繕費の総額を均等に積み立てるので、原則として修繕積立金は値上げしません。しかし、長期修繕計画の見通しが甘い場合や、後述の建設業界の人件費高騰などにより、修繕費が不足した場合は、値上げの可能性があります。
(3)一時金徴収方式
一時金徴収方式では、月々の修繕積立金は一定額で比較的安価に抑えられていますが、修繕工事の直前に不足分を追加で徴収します。不足金が100万円単位の高額になる場合もあり、各住戸で追加金を準備しておく必要があります。この方式は、一時金の負担額が大きいため、あまり多くは採用されていません。
現在、管理している都内ビンテージマンションですが、ポンプの取り換えで臨時的な支出が出たために、1LDKを所有しているオーナーは20万円を支払わなければなりませんでした。(賃料15万円の収益物件です)このように築年数が古くなるにつれ、予期せぬ追加費用を徴収されることもあります。
タワーマンションは割高
タワーマンションの場合、通常のマンションよりも修繕積立金が割高になる傾向があります。タワーマンションは、20階建て60mを超える高さのため、大規模修繕工事に通常の足場が使えません。そこで、ゴンドラ足場や移動昇降式足場を使うため、通常のマンションよりも工期が長くなるため、工事費用も高額です。修繕積立金は、30階建て以上の高層マンションになるほど上がる傾向があります。
また、タワーマンションは、歴史が浅く大規模修繕の実績が少ないため、長期修繕計画で、必要な金額を正確に見積ることが、難しいという事情があります。ですので、均等積立方式であっても、予期せぬ費用の発生により値上げする可能性があるので、注意が必要です。
タワーマンションを購入する方は、月々のローンの支払いの変動に加えて、数万円の出費のバッファは想定した上で購入を検討しましょう。
建設業界の人件費高騰
建設業界の人件費高騰は、大規模修繕工事費用の値上がりにつながるため、修繕積立金に大きく影響します。人件費高騰の主な原因は、1990年初頭のバブル崩壊やリーマンショックによる建設業からの人離れと、東日本大震災の復興需要や東京オリンピック需要による人手不足が考えられます。
- 旧耐震基準のマンションや、耐震強度に問題がある場合
1981年に施行された新耐震基準以前の、旧耐震基準で建てられたマンションの多くは、耐震補強が必要です。また、1階が駐車場で耐震壁が少ないなど、耐震性能を低下させる形状になっているマンションも、耐震補強が必要になる場合があります。
マンションの耐震補強に必要な金額は、条件によって変わりますが、おおよその目安としては一戸あたり300万円~1000万円にのぼります。仮にこの金額を20年間で積立てるとした場合でも、1ヶ月当たり1.2万円~4.2万円もの修繕積立金の値上げです。
このように、耐震補強には多額の費用がかかるため、修繕積立金でまかなえずに断念するケースもあります。
また、耐震補強を修繕積立金でまかなってしまったため、数百万円の修繕積立金しか残っていないマンションも存在しているのが現状です。
購入を検討しているマンションの「積立修繕金の総額」は必ず確認するようにしてくださいね。
一番怖い「空室の増加」による値上げ
値上げの中でも、一番怖いのが「空室の増加」による値上げです。空室が増えるほど、修繕積立金を支払う区分所有者が減るため、一戸あたりの負担が多くなります。空室が増える主な原因は、以下の4つです。
(1)老朽化
修繕費の不足などが原因で、必要な修繕が十分に行われないと、建物の老朽化が進行します。老朽化による「住みにくさ」で引っ越す人が増える一方で、「資産価値の低下」により買い手がつかないため、空室が増加します。
(2)耐震不足
前述のとおり、耐震不足と診断された建物でも、費用面から耐震補強工事を断念せざる得ないケースがあります。しかし、耐震不足は資産価値低下を招くため、空室増加の大きな要因の1つです。また、耐震強度に問題のある物件は住宅ローンの貸し出しをしてくれる銀行も限られてしまうので、売却にも時間がかかってしまいます。
(3)区分所有者の高齢化
マンション区分所有者がご高齢のため、介護施設に入居するなどで、空室となるケースです。子供など管理を依頼された親族が、何もせずに部屋を放置する場合も多く、修繕積立金の滞納が起きやすくなります。
また、滞納分を請求すること自体も費用がかかりますので、余計な出費がでてしまいます。
(4)世代交代による相続放棄
区分所有者が借金を残して亡くなり、マンションを売却しても返済できない場合に、子供が相続放棄するケースです。相続放棄になると、マンションの所有権が宙に浮いてしまう場合があり、修繕積立金の徴収が難しくなります。
マンションの空室が増えると負のスパイラルに
マンションの空室が増えると、修繕積立金不足が深刻化して、値上げでも追いつかなくなります。そうなると、必要な修繕が行えずに老朽化が進行し、さらに空室が増えるという「負のスパイラル」に陥りかねません。
事実、東京都内のマンションでも空室が目立つマンションも出てきています。
まとめ
今回は、修繕積立金が上がる原因について解説しました。
マンション選びで、修繕積立金の値上げを避けたい場合は、30年先まで見据えた「均等積立方式」が最も安全ですが、やはり、新築当初からの高額な負担額が気になってしまいますね。また、マンション購入直後の費用負担を抑えたい場合は、「段階増額積立方式」がオススメですが、段々負担が大きくなる前にマンションを手放すのが賢い選択と言えるでしょう。
そして、どの積立方式の場合でも、修繕積立金はマンションの劣化を防ぎ資産価値を守るための「重要な投資」であることに、変わりはありません。ですので、マンションの20年・30年先の将来を見据えて「魅力ある建物」を維持するためにも、マンションの一人一人が真剣に考えていくべきことでしょう。