一つとして、同じ不動産は存在しません。
しかし、物件情報をネットでチェックされている方はお気づきかもしれませんが、一つの物件を複数の不動産会社が紹介することはよくあります。
「なんで重複する情報を発信しているの?」
「どこに問い合わせればいいの?」
と疑問に思っている方に向け、このブログでは同じ物件が違う不動産会社から紹介される理由をお伝えしたいと思います。
目次
不動産仲介の2つの形態
同じ物件を複数の不動産会社が紹介するという構造を理解するには、まず不動産の「仲介形態」についての理解を深められるとわかりやすいと思います。
1.片手取引
不動産の売主、買主、それぞれに別の不動産会社がついて仲介する形態を「片手取引」といいます。
2.両手取引
一方で、不動産の売主、買主を一つの不動産会社が仲介する形態を「両手取引」といいます。
「購入」「売却」はそれぞれ別の取引
不動産仲介は、売主から売却依頼された不動産会社が買主を付けなければならないという決まりはありません。
つまり、物件に対して買主を紐づける「客付け」は、売主を担当している不動産会社とは限らないということです。
「レインズ」により物件情報は不動産会社に共有される
全国ほとんどの不動産会社が会員となっているネットワークシステムを、「レインズ」といいます。
レインズは、簡単にいえば会員となっている不動産業者のみが閲覧できるSUUMOやHOME’Sなどの不動産ポータルサイトのようなものです。
全国の売り出し物件のほとんどは、このレインズに登録され、不動産会社は簡単に他社の物件情報を取得できます。
先述通り、売却中の物件に買主を紐づける「客付け」は物件を預かっている不動産会社以外でも可能です。
他社から客付けされた場合が、先ほど説明した「片手取引」ですね。
不動産会社は、自社で売却を依頼された物件以外にも、レインズで情報を得た他社の物件の販促活動を行い客付けすることもあります。
これが、一つの物件を複数社が紹介するカラクリです。
他社物件を紹介するときは「帯チェン」する
不動産会社が他社の物件を紹介するときは、「帯チェン」するのが一般的です。
「帯」とは、販売図面の下部にある会社情報のこと。
これを、自社の情報に「チェンジ」するんですね。
帯チェンするためのシステムまで所有している不動産会社もあるほどです。
私も数年前までは業界の慣習ということで「帯チェン」をしていましたが、最近では売り主さんの名前も知っていただきたいということで、ありのままの情報をご提示するようにしています。
帯にある文言はなに?
帯のところに「広告可」や「自社ホームページのみ広告可」「承諾要」という文言がある場合、事前にその業者に連絡すればその不動産会社でも掲載が可能となります。
「広告可」となっていれば、どの不動産会社でも承諾なく掲載ができるということです。
また、売主が業者の場合、多くの物件で手数料として3%が支払われることもあります。
以前、お客さまで「勧められる物件がすべてリノベ物件ばかりだった(リノベ希望ではないのに)」という方がいましたが、物件を調べてみると、全ての物件が売主サイドからも手数料が出る物件だったということがありました。
基本的に複数社を周って物件探しする必要はない
ほとんどの不動産情報が全国で共有されている今、不動産会社A社・B社・C社・D社をまわって掘り出しものを狙うという動きはナンセンスかもしれません。
ただ、特定のエリア(文京区や城南エリアなど学区やアドレスを特に気にされるところ)や投資物件の場合は、「良い物件が入ったらこの人に声をかけよう」などという水面下の取引も行われることがあります。
たとえば、文京区の誠士小学校の学区内の物件は大変人気で、なかなか空き情報が出てきません。このような物件に関しては、様々な「ツテ」を使って物件情報を入手する必要があるでしょう。
また、新築アパート投資物件も水面化で情報が共有されているので、その領域に特化している不動産会社と普段から連絡をとっておくことで情報をまわしてくれます。
「自社物件以外」の問い合わせの流れ
ここまでお伝えしてきましたように、不動産は必ずしも売主が依頼した不動産会社だけが物件の広告を出しているわけではありません。
「広告を出している=物件について詳しい」という訳でもないということです。
広告だけ出している物件に問い合わせが入った場合、不動産会社はまず、売りの仲介会社に対し「物件が残っているのか?」「紹介は可能か?」を確認します。
すぐに回答を得られることは少ないので、問い合わせ後に折り返しの連絡を待つことになります。
中には他社による客付けNGの物件も
SUUMO等に掲載されている物件の中には、特定の業者からしか購入できないものもあります。
この場合には、お客さま自身で売却可能な業者に連絡をとっていただく必要があります。
この時、注意していただきたいのが、不動産会社や担当者によっては「嘘」をつかれてしまうこと。「うちでは紹介できない物件だから申し込みが入っていることにしよう……」と嘘をつかれてしまうと、折角の良い物件を購入するチャンスを逃してしまう場合があるのです。
そのため、自社の利益を優先させるのではなく「直接問い合わせてみてくださいね」と言ってくれる顧客想いの担当者とぜひ繋がってほしいと思います。
まとめ
不動産は基本的に、どの不動産会社からも客付けができます。
なかには特定の業者しか紹介できない物件もありますが、信頼できる不動産会社であれば「この物件は売主の仲介会社に直接、連絡する必要があります。」など、自社の利益を第一優先にしない率直な助言をくれるものです。
このことを踏まえて、良い物件探しをしていただきたいと思います。