ご年収によって、住宅ローンがいくら借り入れられるかは異なります。また借り入れられたからといって、それが無理なく返済できる額とは限りません。

本記事では、年収700万円前後の方にとっての適正な住宅ローンの借入額を、3つのシミュレーションから考察していきたいと思います。

年収700万円の住宅ローン「借入限度額」

まずは、年収700万円の方がいくらまで借り入れられるかについてシミュレーションします。

「借入限度額」とは?

借入限度額とは、金融機関がその人に対して融資しうる最高額です。

「借りたい」からといって上限を設けずに融資してしまっては返済されないリスクが上がってしまうため、金融機関は年収による「返済比率」の上限を設定しています。

「返済比率」とは?

返済比率とは、年収に占めるローン返済額の割合です。

たとえば、年収700万円に対して年間のローン返済額が70万円だった場合、返済比率は10%となります。

各金融機関、設定している返済比率の上限は異なります。

たとえば、「ずっと固定で安心」でお馴染みのフラット35の返済比率は以下の通りです。

(出典:住宅金融支援機構

年収700万円は「400万円以上」ですので、35%が上限となります。つまり、年間のローンの返済額が「245万円」以内に収まることが一つの条件となっているということですね。

変動金利の住宅ローンは、年収700万円なら返済比率「40%」の金融機関が多いように思います。この場合、年間の返済額は「280万円」までとなります。

ただし、返済比率は住宅ローンのみならず、カーローン、携帯の端末代、キャッシングなどその他の借り入れの総額と年収との比率として算出されます。たとえば、カーローンで年間36万円返済しているとすれば、その分、住宅ローンの借入限度額は引き下がります。

【シミュレーション1】年収700万円の方の借入限度額

変動金利で住宅ローンを借り入れる場合、多くの金融期間では、適用金利のまま審査されるわけではありません。

2024年4月現在、変動金利の水準はネット銀行だと0.37%を下回っている金融機関もありますが、審査されるときに適用される金利は3%~4%なのです。

変動金利は将来的な金利上昇リスクがあるため、「今後、金利が上がっても返済できるか?」が審査されるということなのです。

これらの点を踏まえまして、年収700万円の方が変動金利で借り入れられる限度額の目安をシミュレーションして算出してみたいと思います。

モデルケース
・額面年収:700万円
・返済期間:35年
・返済比率:40%
・元利均等返済
・審査金利:3.5%
・その他の借り入れなし

住宅ローンの借入限度額の算出式はこちら▼

借入限度額=(年収×返済比率÷12-その他のローンの返済額)÷「審査金利〇%で100万円を借り入れた場合の毎月の返済額(モデルケースの場合は「4,133円」)」÷ 100万円

上記算出式にモデルケースを当てはめます。

(700万円×0.4÷12-0)÷(4,133円÷100万円)
≒5,646万円 

このモデルケースでにおける住宅ローンの借入限度額は、約5,646万円と算出できました。

ただし、住宅ローンの審査では年収や年収比率だけを見られるわけではありません。勤続年数やお勤め先、過去のローンの延滞歴など、あらゆる要素で審査されるため、同じ年収の方でも借入限度額が引き下がる可能性もあります。

年収700万円の「無理のない」住宅ローン借り入れ額とは?

さて、一つ目のシミュレーションで年収700万円の方は5,646万円程度の住宅ローンを組むことも可能だとわかりました。

しかし、「借り入れられる額」と「実際に無理なく返済していける額」というのは異なります。審査に通ったからといって、ご自身のご家庭の収支に落とし込んでシミュレーションしてみなければ、借り入れたあとに苦労されることにもなってしまいかねません。

無理のない返済比率は「30%」前後までが目安

たとえば、「単身者」と「奥様・お子さん2人を養っている方」とでは、家計における支出に大きな差があるはずです。

あるいは親御さんの介護をされていたり、ご趣味が多かったり……ライフスタイルや将来のご希望は、各家庭によって大きく異なるもの。「返済比率30%」が無理なく返済できる方もいれば、「それではちょっと家計が苦しい……」という方も当然ながらいるでしょう。

一説には、無理なく返済できる返済比率は「25~30%前後」が目安だといわれています。

年収700万円の方であれば、年間のローン返済額が「210万円」ほど。月々にならせば、「17.5万円」ほどです。

もちろん、この金額でも負担が大きいと感じる方もいらっしゃることでしょう。返済比率30%前後もまた、あくまで目安。無理のない年収比率が「25%」だとしても、おかしいことではありません。

住宅ローンの返済は数十年と長きにわたるもの。重要なのは、なにより無理なく、継続して返済していけるかどうかなのです。

そういう意味では長年賃貸していた方が無理なく払っていけた「賃料/月」が参考になると思います。

【シミュレーション2】年収700万円の方の無理のない借り入れ額

それではここからは、年収700万円の方が「返済比率30%」「25%」とした場合の変動金利の借り入れ額をシミュレーションしてみたいと思います。

モデルケースは先ほどと同様で、返済比率のみ変えて算出してみます。

返済比率30%の場合

借入限度額=(年収×返済比率÷12-その他のローンの返済額)÷「審査金利〇%で100万円を借り入れた場合の毎月の返済額(モデルケースの場合は「4,133円」)」÷ 100万円

(700万円×0.30÷12-0)÷(4,133円 ÷ 100万円)
4,234万円

返済比率25%の場合

借入限度額=(年収×返済比率÷12-その他のローンの返済額)÷「審査金利〇%で100万円を借り入れた場合の毎月の返済額(モデルケースの場合は「4,133円」)」÷ 100万円

(700万円×0.25÷12-0)÷(4,133円 ÷ 100万円)
3,529万円

上記シミュレーションは、いずれも「3.5%」という適用金利で算出した借入額です。今の金利に置き換えれば、実際にそれぞれの返済比率で返済した場合のご予算は引きあがります。

ただ先述通り、変動金利は将来的な金利上昇リスクがありますので、「今」だけではなく「金利が0.5%、1%……上がっても返済していけるか?」あるいは「金利が上昇したときに繰上げ返済して月々の返済額を抑えられるか?」などをしっかりシミュレーションされることをおすすめいたします。

とはいえ、今の低金利状態をうまく活用し、手元にキャッシュを残しつつ返済比率高めで借り入れるのも一つの手だと個人的には考えています。住宅ローンの借入額を抑えたとしても、金利の高いカーローンや教育ローンなど、その他のローンが必要になってしまえば本末転倒。手元にキャッシュが残っていれば、金利上昇局面には繰り上げ返済をして月々の負担を抑えることも可能です。

配偶者と連債務・連帯保証で住宅ローンを借り入れるケース

不動産エージェント

単身ではなく、配偶者と「収入合算」して住宅ローンを借り入れる場合は、借入限度額があがります。またご予算を増やすのみならず、収入合算した方も住宅ローン控除が受けられるなどのメリットもあります。

ただその一方で、借り入れる際の諸費用がかさむなどのデメリット名義を分けるからこそのリスクなども忘れてはいけません。

収入合算する方法は、次の3つです。

1.ペアローンを組む
2.収入合算する人を「連帯保証人」とする
3.収入合算する人を「連帯債務者」とする

それぞれのメリット・デメリットは、以下の記事にまとめております。

連帯保証、連帯債務、ペアローンとの違いとリスクとは?

【シミュレーション3】年収700万円・年収400万円の夫婦の借り入れ可能額

それでは最後に、それぞれ年収700万円・年収400万円のご夫婦が「ペアローン」を組んだ場合の借入限度額および「返済比率25%」で借入た場合の借入額をシミュレーションしてみます。

モデルケース
・額面年収:700万円・400万円
・返済期間:35年
・元利均等返済
・審査金利:3.5%
・その他の借り入れなし

「返済比率40%」の借入限度額

借入限度額=(年収×返済比率÷12-その他のローンの返済額)÷「審査金利〇%で100万円を借り入れた場合の毎月の返済額(モデルケースの場合は「4,133円」)」÷ 100万円

●年収700万円

(700万円×0.4÷12-0)÷(4,133円÷ 100万円)
5,646万円

●年収400万円

(400万円×0.4÷12-0)÷(4,133円÷ 100万円)
3,226万円

●合算

約5,646万円+約3,226万円≒8,872万円

「返済比率25%」の場合の借入額

借入限度額=(年収×返済比率÷12-その他のローンの返済額)÷「審査金利〇%で100万円を借り入れた場合の毎月の返済額(モデルケースの場合は「4,133円」)」÷ 100万円

●年収700万円

(700万円×0.25÷12-0)÷(4,133円÷ 100万円)
3,529万円

●年収400万円

(400万円×0.25÷12-0)÷(4,133円÷ 100万円)
2,016万円

●合算

約3,529万円+約2,016万円≒5,545万円

※収入合算者を「連帯保証人」「連帯債務者」とする場合は、収入合算者の年収がそのまま審査対象とはならず、借入可能額が引き下がる傾向もありますのでご注意ください。

まとめ

同じ「年収700万円」の方でも、ライフスタイル・将来設計・収入合算者の有無などにより、適正な住宅ローン借入額は異なります。

住宅ローンの返済シミュレーションは、必ずオーダーメイドで作っていただきたいと思います。「返済比率30%以下」なら安心とも言い切れるわけではありません。

昨今の住宅ローン金利は「史上最低」ともいえる水準にまで引き下っているため、住宅のご予算やご予算に対する借入額の割合が上昇しているように思います。しかし、住宅ローンは2~3年で返済するものではないため、あらゆるリスクを想定して借入額を検討するのが大事です。

私は一体いくら借りられるの?そもそもどれくらいの価格の家が買えるのか知りたい等、不動産のご質問や分からないことがあれば、お気軽にご相談ください。