今回は、マンションの修繕費について取り上げます。
マンションの修繕費は、建物の劣化を防ぎ、資産価値を守る上でとても重要です。
通常は、修繕積立金として、毎月管理組合に積み立てて、定期的に必要な修繕工事に使います。
では、マンションの価値を守るためには、修繕積立金は一体いくら必要なのでしょうか?
修繕積立金費用の必要額について、マンションの築年数や広さとの関係を見ながら、ご説明していきます。
目次
築年数と修繕積立金の関係
最初に、国土交通省の統計から、マンションの築年数と修繕積立金の関係を見てみます。
(⚠︎ 2024年4月頃最新データに差し替え予定)
マンション建築年別 1戸あたりの修繕積立金
(2018年 国土交通省調査 駐車場使用料等からの充当額を含む)
参照元:「マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状」
統計から、おおむね年数が経過するほど修繕積立金の費用は上がり、築40年以上のマンションの平均額は1万3476円と、築9年以下の1.5倍です。
では、全てのマンションの修繕積立金が、年数の経過とともに値上がりするかというと、そうでもありません。
マンション修繕費の積立方式の違いによって、値上がりする場合と値上がりしない場合があります。
修繕費の積み立て方式とは?
修繕費の積立方式は、大別すると次の「均等積立方式」と「段階増額積立方式」の2種類です。
1.均等積み立て方式
均等積立方式では、マンション新築時から30年間に必要な修繕費の総額を均等に積み立てます。
この方式は、年数が経過しても原則として積立金額が変わらないのが特徴です。
次の段階増額積立方式と比較すると、新築時の修繕費負担が大きいデメリットがある一方で、将来の負担が軽くなるメリットがあります。
1つのマンションに長く住み続ける方は、この方式がオススメです。
2.段階増額積立方式
段階増額積立方式では、マンションの建物劣化状況に応じて、5年、10年など一定期間ごとに修繕費の金額を見直して、値上げを行います。
この方式は、新築当初の負担額が小さいメリットがあります。
しかし一方で、最初の修繕積立金設定が低すぎると、将来修繕費用不足に陥る恐れがあるので、注意が必要です。
マンション修繕積立金の値上げには、理事会の普通決議で区分所有者の半数以上が出席し、さらにその出席者の半数以上の賛成が必要です。
そのため、あまりにも費用の値上げ額が大きいと、普通決議での合意が得られずに、修繕費が不足する恐れがあります。
3分の1以上のマンションは、修繕費が足りない!
国土交通省の統計によると、全マンションの3分の1以上にあたる34.8%のマンションが、計画上の修繕積立額よりも不足状態です。
さらに、不足の割合が2割を超えるマンションは、15.5%にのぼります。
参照元:「マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状」
マンション修繕費の不足金額が大きくなると、懸念されるのが修繕不足による経年劣化の進行です。
そうなると、建物の価値が著しく低下して、売ろうにも買い手がつかず、引っ越したくても引っ越せない状況になりかねません。
そこで、最悪の事態を避けるためにも、マンション選びの段階で、修繕積立金の金額から、将来修繕費不足にならないかどうかを、見極めることが大切です。
政府が示したマンション修繕積立金の「めやす」
妥当な修繕積立金の金額は、マンションの規模や専有面積によって変わってきます。
そこで、2011年に国土交通省が示したガイドラインの中から、マンション修繕積立金の「めやす」を見てみます。
15階建て未満のマンションの場合の修繕費めやす
20階建て以上のマンション(タワーマンションなど)の場合の修繕費めやす
参照元:国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」
例えば、15階建て未満、建築延床面積が5,000~10,000㎡のマンションの、専有床面積80㎡の部屋を購入する場合、修繕積立金の範囲のめやすは、以下となります。
修繕積立金の上限:80㎡×265円/㎡・月=2万1200円/月
修繕積立金の下限:80㎡×140円/㎡・月=1万1200円/月
(平均値:80㎡×202円/㎡・月=1万6160円/月)
また、一般的な15階建て未満のマンションでは、建築延床面積が広いほど修繕費は割安です。
そしてタワーマンションでは、一般的なマンションより修繕費は上がります。
まとめ
今回は、マンション修繕費について取り上げました。
マンションの劣化を防ぎ資産価値を保つためには、適切な修繕計画とそれを支える修繕積立金が必要です。
修繕積立金の妥当な金額は、マンションの建築延床面積や専有面積によって変わってきます。
マンション選びをされる際は、前述の国土交通省が示した「修繕費のめやす」で、妥当な金額を計算して比較されることをオススメします。
計算の結果、妥当な金額範囲から大きく外れて、少ない場合は、将来修繕費が足りなくなる恐れがあるので、注意が必要です。
また、12年~15年の周期で実施されることが多い大規模修繕工事の計画表があるか、また資金計画で大きなマイナスになっていないか等も購入する前の大事な判断材料になります。
中には既にマンション組合で借入を行なっているマンションもありますので、きちんと状況把握をしたうえで購入することが大事です。
マンション選びをする上で、修繕積立金が妥当かどうかは、将来の建物資産価値をも左右する重要事項なので、わからないことがあれば、イーエム・ラボにご相談ください。