土地や戸建て(建物)を好条件で売却するには、適正価格を把握して売り出さなければなりません。そのためには、信頼できる業者に正確に査定してもらう必要があります。
その一方、ご自身でも査定のポイントを知っておくこともとても重要です。それは売主自身の保身のため。不動産業者の中には、明らかに相場より高い査定額を出してくる業者がいます。その理由は、媒介契約を取りたいからに他なりません。高額査定に一喜一憂したり、騙されたりしないよう、売主自身も査定方法を知っておくことが大切なのです。
そこで今回は実際に多くの土地や建物を査定してきた不動産エージェントが、土地や戸建てがどのように査定されているのか、また査定する時の注意点について解説していきます。
目次
土地や戸建て(建物)の査定方法
土地や戸建ての価値を算出するときには、土地部分と建物部分で別々の査定方法が用いられます。それぞれの査定方法は以下の通りです。
- 土地:取引事例比較法
- 建物:原価法
まずは、こちらの査定方法に関する基礎知識について解説していきます。
土地の査定は「取引事例比較法」
取引事例比較法」とは、査定する物件と近い条件の不動産が過去にいくらで売れたのかを調査して価格を算出する方法。マンションを査定する際にも利用される方法です。
マンションの査定方法については「中古マンションの査定方法をどこよりもわかりやすく解説!」をご覧ください。
土地の査定は、マンションよりも難易度が上がります。なぜなら、土地は1つとして同じ立地や形状のものがないからです。
取引事例比較法は、採用する成約事例によって結果が大きく異なる査定方法。そのため、不動産会社によって査定額が大きく変わる可能性があるので注意しましょう。適正価格を知るためには、セカンドオピニオン、サードオピニオンを求めることも大切です。
建物の査定は「原価法」
「原価法」とは、査定する建物をもう一度建築した場合に必要な費用(再調達価格)を算出し、建物が老朽化している分だけ価値を差し引き(減価修正)して、査定価格を算出する方法です。
ただ戸建ての建物部分については、「築10年で価値が半分」「築20年で価値がゼロ」など大雑把な査定をする業者も多く存在します。本来、建物はリフォーム歴や資材、基礎などあらゆるものの状況とともに需要を踏まえて査定すべきもの。「築20年だから価値はつきませんよ」などと簡単に査定を出してくる業者には十分に注意してください。
訪問査定による適正な査定をしてもらうべき
土地・戸建て、いずれの場合も、机上査定より訪問査定の方が絶対的におすすめです。
机上査定とは、査定する土地や戸建ての実物を見ることなく、以下の情報をもとにおこなう簡易的な査定です。
- 査定する土地や戸建ての過去の成約価格
- 現在売り出されている周辺の類似物件の価格
- 不動産市場の動向等
机上査定はメールやネットから手軽に依頼でき、おおよその価格を早く知ることができますが、正確な査定結果には期待できません。
一方、訪問査定は、専門家が訪問して以下のような状況を確認しておこなう査定方法です。
- 土地の状況(大きさ・形状・奥行等)
- 建物の状況(劣化具合・日差し・リフォーム歴)
- 周辺状況(接道状況・日差し・傾斜等)
土地や戸建ては、実際に専門家の目で確認しなければいけない事項が多くあります。地図や謄本などの数値だけでは、適正な価値を測ることはできません。二度手間になってしまったりぬか喜びになってしまったりすることを避けるためにも、必ず不動産業者による訪問査定を受けるようにしましょう。
土地や戸建ての査定額に影響を与えるもの
ここからは、土地や戸建てのどんな条件が査定にどんな影響を与えるか解説します。
土地
土地の査定でポイントとなる事項は、以下の通りです。
査定ポイント | 詳細 |
規模 | 土地の規模が周辺と比べて標準的な大きさかどうか(広すぎるとマイナス評価になる) |
形状 | 整形(四角形) やや不整形(台形など):原価率-10%が目安 不整形(三角形など):-20% 路地状敷地(旗竿地など):~−50% |
利便性 | 最寄り駅や商業施設からの距離 |
道路付け状況 | 一方路、角地、二方路、三方路の順で評価が高い 基本的に道路方位は北、西、東、南の順で評価が高い 無道路(再建築不可)は原価率-50%になることも |
接道幅 | 接道道路は4m以下だとマイナス評価に 間口2m以下だと再建築不可に |
嫌悪施設の有無 | 土地およびその周辺に以下のような施設や公害があるかどうか ・高圧線、墓地、汚水処理場、火葬場などの施設 ・騒音、悪臭、大気汚染、土壌汚染、地盤沈下などの公害 |
このように土地の査定では、大きさや形、立地、接道状況などがポイントとなります。
形状が整形で標準的な大きさだと、土地を余すことなく活用できるため査定額が高くなります。また、南向きの土地は日当たりが良くなり、角地は日当たりと風通しの両方が良くなることから、高額な査定結果に期待できるでしょう。
一方、不整形や路地上敷地の場合は、有効に利用できない部分が発生することにより査定額が下がります。条件が悪いと、相場よりも50%近く評価が下がることもあります。
建物
一方、戸建ての査定ポイントは、以下の通りです。
査定ポイント | 詳細 |
築年数 | 経年により価値は下がるが、築年数だけで価値を測ることはない |
間取り | 部屋の広さ、部屋の数、生活動線、コンセントの位置など多くの人にとって利用しやすい間取りかどうか |
日当たり・通気性 | 日当たりや風通しの良し悪し |
リフォームの有無 | リフォームによって劣化した住宅性能が回復しているか、バリアフリーや省エネなどが施されているか |
設備や仕上げ材 | キッチン・バス・トイレなどの設備の質 仕上げ材のグレードが高いか低いか |
耐震基準 | 新耐震基準か旧耐震基準か その他、制震構造などがプラス評価になる場合も |
欠陥・瑕疵の有無 | 雨漏り、シロアリ被害、アスベストなどの有害物質の有無 |
建物の査定で確認されるポイントは、生活のしやすさや建物の質、安全性などです。「こだわりの家」よりは、一般的に需要の高い間取りや性能を備えていた方が評価は上がりやすい傾向にあります。
耐震性能が著しく低い旧耐震基準の建物や、アスベストなどの有害物質が利用されている場合は、安全性が低くイメージも悪いために査定額が大きく下がってしまいます。ただし築年数の古い物件であっても、リフォームによって住宅性能が回復・向上されていると査定額にも反映される可能性があります。
土地や戸建てを査定してもらうときの注意点
土地や戸建てを査定してもらうときは、いくつか注意点があります。ここでご紹介する4つの注意点をもとに査定してもらうことで、適正価格を知り、良質な不動産業者を見極めることも可能になります。
売主にしかわからないことを伝える
- 雨漏り
- 浸水被害
- 配管トラブル
- 壁や床のへこみやきしみ
- 隣人の状況(ゴミ屋敷た迷惑な方の存在)
- 敷地内での事件・事故
査定する業者が、これらのことを全て把握するのは困難です。
このような売主にしかわからない住宅や土地の欠陥・不具合等があれば、必ず口頭で伝えるようにしてください。
これは物件の「瑕疵(かし)」と呼ばれる部分。物理的な瑕疵、心理的瑕疵、いずれも告知義務があります。つまり事前に瑕疵の存在を買主に伝えずに売買契約に臨んでしまえば、後々トラブルに発展する恐れがあるということです。
瑕疵を明らかにすることで査定額、成約価格に影響を与えることは否めませんが、これもトラブル回避のための保身術の1つです。
境界確定が必要な場合も
「境界」とは、簡単にいうと土地と土地との境目のことです。日本の土地は、全てが境界確定しているわけではありません。公簿上は〇〇㎡となっていても、隣地との境界が曖昧になっている土地も存在します。その場合にも売却自体は可能ですが、買主から境界確定を求められた土地は、境界を明確にしなければなりません。
とくに土地の平米単価が高い都市部では、少しの境界地点の違いで大きな価格差になりますので、境界確定を求められる可能性は高いと考えておきましょう。逆に田舎の山林地などでは、境界確定を求められるケースは稀です。
境界確定は土地家屋調査士におこなってもらうのが一般的で、数十万円の費用がかかります。この費用は多くの場合、売主の負担になります。境界確定には数か月かかることもありますので、早く土地を売却したい場合には事前に測量をしておくのがいいでしょう。
査定結果の根拠を確認する
「査定額は〇〇円です」と言われて、「はい、そうですか」ではいけません。評価にプラスに働いた点のみならず、マイナスに働いた点、比較対象とした事例などを詳しく教えてもらい、査定額の適正性を見極めることがなにより大切です。
土地や戸建てを査定してもらう目的は、売り出し価格を決めるために必要な指標を知るため。指標となる査定額を正確に算出してもらい、根拠をご自身で理解しなければ、適切な売り出し価格を設定できないのです。
またこちらが特に聞かなかったとしても、根拠について売主に分かりやすく丁寧に説明してくれる業者は信頼できるとも判断できます。逆に簡易的な査定書しかくれない業者は、その後の取引においても不安があるといえるでしょう。
複数の不動産会社に査定してもらう
土地や戸建ての査定は、できるだけ複数の不動産会社に依頼しましょう。それは不動産会社によって、査定の方法や基準が異なる場合があるからです。
とくに土地を査定するときに用いられる「取引比較事例法」は、不動産会社による査定結果に大きな差が生じる可能性があります。
また、査定を1社に依頼しただけでは、査定の根拠を聞いても結果が正しいかどうか判断できないでしょう。複数の業者に査定を依頼し、セカンドオピニオンやサードピニオンをもとめることで、より確実に適正価格を知ることができます。
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まとめ
土地や戸建ての査定は、マンション以上に複雑です。どんな物件にもいえることですが、査定方法を知ることは売却の第一歩。ご自身の物件のどんな場所がプラスになるのかマイナスになるのかを知っておくことで、適正価格とともに不動産業者の信頼性も見極めやすくなります。
大前提として忘れないでいただきたいのが、売り出し価格は売主であるあなたに決定権があるということ。査定額は、あくまで不動産会社が「これくらいで売れるだろう」と予測する価格です。しかしそこが適正でないと、売主の希望がうまく反映されません。売り出し価格次第で売れるまでの時間と売却金額が決まる以上、査定は不動産売却で重要な局面であることは間違いありません。
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