今回は、「遺言書の必要性」ついて取り上げます。日々、不動産の取引を行う中で、非常に複雑で多様化していると感じるのが「相続」です。

相続は、財産とそれを引き継ぐ権利を持つ相続人がいる全ての方に必ずやってきます。

言い換えると、準備ができることにもかかわらず、本当に多くの方が、ご両親が亡くなってから、「どうしたらいいでしょうか?」と慌ててしまうのが、現状です。

相続する権利を持つ人が2人以上いらっしゃる場合、適切な準備を行っていないと、必ずといっていいほど問題が起こります。そして、問題をより複雑化させているのが、相続に関する間違った認識です。

相続問題は、最初は「感情問題」から生まれて、最終的に「金銭問題」となって表面化する傾向があります。

仲のよかった兄弟姉妹が相続をきっかけに縁が切れてしまった、何千万円の話じゃないからうちは揉めないと言っていた家族が金銭問題で揉めてしまったなど、日頃からこういったトラブルを見聞きします。

金銭の大小関係なく、いつかは考える必要のあることですので、一緒に見ていきましょう!

日常から抱いていた不満等の感情問題が「相続」を「争続」に!

相続時によく起こりがちなのが、以前から兄弟姉妹の間で抱いていた不満が一気に噴出することです。

そして、子供のころから抱いていた兄弟姉妹の間での、不公平感などの感情問題が大きければ、「相続」が「争続」に発展する場合もあります。

相続する立場の人達は、

・相続で、財産をもらうのは当然だ!

・兄弟姉妹、法定相続こそが平等だ!

・生前、兄の方が色々経済的に負担してもらっているから、自分の方が多くて当然だ!

と、感情的なわだかまりが大きいほど、自分が多くもらって当然と感じてしまう傾向があります。そうなると、円満な相続は難しくなります。

円満な相続のためには、ふだんから本音で話し合うことで、感情的なわだかまりを少なくすることが重要です。

相続税対策が裏目に出てしまう罠とは!

財産を託していくご両親がよかれと思って行った相続税対策が、裏目に出てしまうこともよくあります。

例えば、空き地の相続税対策として、銀行からの借り入れでアパートを建てて、税金を減額させる事例が有名です。

しかし、ここに大きな罠があります。控除の範囲を超えた評価額の不動産を相続する場合、減額したとはいえ数百万円から数千万円の相続税がかかります。

ご両親がアパートを建てる時に現金を使った上に、銀行から借入れを行った場合、(現金を残していないと)子供さんは相続税が支払えなくなります。

そうなると、相続税のためにさらに借り入れを行わざる得なくなり、多額の負債を背負う事態に陥ってしまうのです。

そこで、相続税対策としてアパートを建てる場合は、実際の相続時にいくらかかるのかを十分に検討して、必要な現金を残しておくことが重要です。

この「相続税対策の罠」以外にも、注意しなければならない「相続の落とし穴」があります。

次の世代のために避けたい「相続の落とし穴」とは?

この、「相続の落とし穴」は、次の世代に災いの種を作らないためにも、絶対に避けたいことです。これは多くの方が、陥ってしまう落とし穴です。

分かりやすくするため、例でお話しします。

例:68歳男性、65歳の妻、お子さんは45歳、42歳の息子さんお二人

不動産(自宅)所有、預貯金に1000万円あった場合を考えます。

預貯金については亡くなった時にかかる葬儀費用などを差し引いて、残った額を配偶者、長男、次男で分けることができます。

しかし、ここで問題になるのが所有している不動産です。

共有で分けることは絶対におすすめしません!

なぜなら、不動産を共有にすると、後々大きな災いの元となるからです。

不動産を共有にすると、各持ち分に応じて出来ることと、出来ないことがあります。

 

例えば、不動産の修繕工事など、現状維持のための最小限の行為は、各共有者が単独でできます。

しかし、不動産を有効活用するために賃貸にする場合は、共有者の持分価格の過半数の同意が必要です。

さらに、不動産を売却するためには、共有者全員の同意が必要となります。

つまり、不動産を共有にすると、賃貸や売却がしにくくなり、有効活用が難しくなります。そのため、不動産の活用方法をめぐり、兄弟間で意見が対立して、関係に亀裂が入ることもよく起こります。

不動産をめぐる対立の、最悪の結果として

自分が亡くなった後、子供達の縁が切れてしまう…

残された妻・夫と子の縁が切れてしまう…

という事態に陥りかねません。

さらに、不動産が共有名義のままで、孫の世代に引き継がれてしまうと、めんどうなことになります。なぜなら、孫の世代になると共有者がさらに増えて、意見をまとめて不動産の処分を決めることが、一層難しくなるからです。

不動産の処分が決まらないまま、建物が老朽化した場合、負の財産になる可能性もあります。

せっかくの資産を共有にしたがために、孫やその先の世代に大きな重荷となって、災いをもたらしかねません。

不動産を共有にしたために、親子兄弟の縁が切れたり、孫の世代に災いをもたらしたりしてしまう・・・そんなこと、絶対に起こってほしくありませんよね。

そのために財産を託していくあなたができることがあります。

それが、遺言書を残すということです。

遺言書を残す3ステップ

遺言書を残す手順は、次の3ステップの手順を踏んで行います。

ステップ1:自分の財産を知る(リスト化する)

まずは、自分が所有している財産をリスト化して、それぞれの評価額を把握する必要があります。財産の全体像を正確に把握することが、公平な相続の第一歩です。

ステップ2:専門家(相続アドバイザー)に相談する

財産が不動産の場合は、専門家(相続アドバイザー)に、現在の評価やざっくりとした相続税額等を聞いて、アドバイスをもらっておきます。

ステップ3:家族や相続する人たちに説明して、財産を決めて納得してもらう

財産の一覧やその評価額と相続税額を把握したら、それを家族や相続する人達に共有します。そして、最後に財産分割を決めて納得してもらいます。

ステップ2と3は、家族で話し合いながら決められる過程であれば、平行して進めても良いでしょう。

一番大切なことは、できる限り「みんなが納得できる遺言書」を作ることです。

「みんなが納得できる遺言書」を作ることで、財産を子供たちや孫たちの世代まで、最大限に生かすことができます。そして、その「みんなが納得できる遺言書」は、資産をのこしていく人にしか出来ないことなのです。

さらに個人的におすすめしたいのはなぜこのような配分で資産を分けたか?という「想い」の部分です。

金銭的に見て均等ではない場合、特に大事になってくるのが「なぜこのように分けたいのか」という気持ちのところです。

ご自身が生涯をかけて築いてきた財産ですので、それをどう分けるかという想いについて語ることは大事な役目の1つだと思って、ぜひ入念に準備していただきたいなと思います。

まとめ

今回は、相続についてお伝えしました。

相続について考えることは「死」と向き合うことです。

ですので、

縁起でもない!

と「相続」や「遺言」の話をすることを、はばかる方も多くいらっしゃると思います。

でも、誰にも必ず訪れる「死」を真剣に考えることが「より良く生きること」につながるのではないでしょうか。

相続を決める遺言は、人生の大きな決断です。なぜなら、遺言を書くことで「生きること」に対して、真剣に向き合う機会を与えられるからです。

相続について十分に話し合い、全員が納得する遺言を作ることで、現在の人生をより良く生きると同時に、財産をスムーズに将来の世代に引き継いで、最大限に生かすことができます。

私自身も日頃から祖母とどのように資産を整理するのか希望を聞いたり、A L Sという難病を患っていた義母とは人工呼吸器はどうするか等、意識がしっかりしているうちに確認をしていました。

みんなが納得した遺言は、「現在の世代」と「将来の世代」の両方の世代に豊かさをもたらしてくれます。

子供たちや孫たち、さらにその先の世代へ、「負の財産」ではなく「正の財産」を残すためにも、相続について決める遺言は先延ばしにせずに、元気な時から考えるようにしてください。